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「文構造」はカルト宗教!

 英語の先生は、よく「文構造がわからないと英語は読めない」と言います。

 

 文構造、なんだか難しげですね。こういう難しげなこと、先生は大好きです。そして、みなさん高校生も、こういうことやっていると勉強した気になりますよね。

 

 文構造ってのは、要するに、この部分が主語で、これが動詞で、これが目的語で、この部分がここに「かかって」ということなんですが、はっきり言って、英語ができる人はこんな風に文を「分析」して読んだりはしません。文構造がわからないと英語は読めない、なんてとんでもないウソです。文構造の分析なんて、教科書の文を機械的に意味不明の日本語に「和訳」する、高校の英語の授業でしか役に立ちません。

 

 と言っても、毎日毎日、何年も「文構造」と言われ続けてきた高校生には、「文構造は必要ない」と言ってもすぐに信じてはもらえないでしょうね。

 

 ということで、ちょっと実験してみましょう。難しかったら流し読みしてください。

 

 Japan Timesにこんな社説が載っていました。 

 一部を見てみましょう。

 

Abe’s Liberal Democratic Party was initially opposed when the government led by the Democratic Party of Japan began talks with other countries in 2011 on participating in the TPP negotiations. When the LDP returned to power, the Abe administration made a U-turn and had Japan formally join the negotiations with the 11 other nations in July 2013. At that time, the government estimated that a TPP deal would push Japan’s gross domestic product higher by some ¥3.2 trillion over roughly 10 years — an anticipated ¥2.9 trillion reduction in domestic farm and dairy output due to the influx of greater imports under tariff cuts more than offset by ¥6.1 trillion in benefits from increased Japanese exports and gains for consumers in cheaper imports.

 

私が日本語に訳すとすると、こうなります。

 

安部首相の自民党は、2011年、民主党政権がTPP参加のための交渉を開始したときには、TPPに批判的だったが、政権につくと方向転換し、2013年7月に正式にTPPの交渉に参加した。その時、政府は、TPPによってGDPが3.2兆円押し上げられると試算していた。ー 関税廃止による安価な輸入農産物によって、農業、畜産業は2.9兆のマイナスになるが、輸出増加と輸入価格の低下による消費者の利益が6.1兆円にのぼるため、結果としてはプラスとなるということだ。

 

 これ、特に赤字の部分を「文構造」を分析しながら訳すととんでもないことになります。というか、前の部分を読まずに、この文だけ読んでも、絶対に「文構造」はわかりません。

 

 試しに、この文だけ取り出して、英語の先生に「この文の文構造を教えてください」と聞いてみてください。絶対に答えられませんから。ということは、訳もできません。あるいは、辞書をひっぱりだして、ああだこうだ言ったあげく、意味不明の「和訳」を言ってくるかもしれません。(そもそも、何年も受験英語を教えている英語の先生ですら、これくらいの新聞記事を辞書を使わなきゃ読めないとしたら、やはり文法訳読式は役に立たないということになりますよね。)

 

 

 この文を「文構造」に着目すると、more than offset by...の部分がよくわからなくなります。offsetが過去分詞なのか、あるは、述語動詞、はたまた名詞なのか。特にこの部分がーーーの後なので、ちゃんとSVを備えた文になっているかどうかも微妙なんです。(あ、この部分何言ってるかわからなくても一向に構わないですからね。逆に理解できる方がおかしい。)

 

 参考のために、正解を言っておくと、赤字の部分は、文構造主義の先生が大好きな「分詞構文」です。それも、分詞には意味上の主語がついています。読んですぐこう答えた先生は、まぁ許してあげましょう。(ほとんどいないと思いますけどね。)

 

 でも、私は決して最初に文構造に着目して、このように分析したわけではありません。その部分までの文章を読んでいて、普通の一般教養があれば、以下のことはすぐにわかります。

 

TPPで関税がなくなると、

 

 1)農業は安い輸入品に押されて損をする 

 2)自動車などは輸出が増える 

 3)3.2兆=6.1兆-2.9兆

 

 1)~3)がわかって、単語や語句がだいたいわかれば、常識的に赤字の部分は上のような訳になります。一般常識と論理力の方がよほど重要なのです。意味がわかってから、いわゆる日本式英文法にあてはめて分析すると「あ、分詞構文か」となるんです。結局、文構造は読解には何の役にも立たない。読解ができるからこそ、文構造もわかるのです。

 

 この記事で、今の入試は、一文一文訳すのではなく全体を速く読む力が重視されていると書きましたが、国立大学の二次試験では、「下線部和訳」の問題が出ています。授業で全文和訳をさせている先生は、「和訳をしないと国立の二次試験に対応できない」と言いますが、それもウソです。この例のように、「文構造読み」をしていると読めないような文が「下線部和訳」として出題されることが多いからです。下線部和訳といえども、やはり一般教養と論理的読解力、その上で、まともな日本語を書く「日本語力」が試されているのです。教科書や長文の文を全て文構造分析して、和訳するような勉強法では絶対に太刀打ちできません。

 

 「文構造がわからないと読めるようにならないから」と言って、文法と和訳ばかり勉強するのは、やはり「カルト宗教」と言われても仕方がないのではないでしょうか。

 

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