「勉強」の害...
今年は高3の授業を担当しています。教科書と平行して、「入試ハイレベル」の長文読解問題集を使っています。大学入試の長文読解問題は「読んで大筋をつかむ」のが一番大事だと思うので「大筋→段落→細部」の順で読めるようにプリントを作ってやっています。それはどうでもいいのですが、今までまじめに「日本式解読法」で勉強してきた生徒からはいろんな質問を受けます。
Creating a living, breathing creature from a genome sequence that exists only in a computer's memory is not possible right now.
文脈をしっかりとらえられていれば「DNA配列の情報だけから、クローンを作ることは今は不可能」という意味で、それは授業の中でもほとんどの生徒がわかっていましたし、もちろん私もそう説明しました。ちゃんとした「和訳」も説明しました。授業後、まじめな女子生徒が質問に来ます。
「a livingの後のコンマはどういう意味ですか?」
「は?まぁandみたいなもんだよ。」
「じゃあなんでandって書かないんですか?」
「書いた人の気分じゃない?」
「そんないい加減な説明じゃなくて、文法的に説明してください。」
「えっと、背が高くてかっこいい男、ってときに、a tall and handsome manと言ったら、うーん、そうだね、単に背が高い+ハンサム、って感じだけど、tall, handsomeってコンマで言ったら背が高い上にハンサム、って感じかな。まぁあくまで僕の主観だけど。」
「参考書には書いてありますか?」
「自分で調べてみれば。まぁでも受験には関係ないと思うけど。」
「え!関係ないんですか!」
「だって、そんな深く考えなくても意味はわかるし、このコンマだって問題には全く出されてないでしょ。」
「でも、普通長い文にコンマがあったときは、そこで意味を区切って訳せと言われました。この場合はここで区切っちゃダメなんですか?これは、Creating a living, で分詞構文なんじゃないんですか?」
「え!そうしたら意味がぐちゃぐちゃになるじゃん。」
「でも、これは分詞構文じゃないんですか。」
「違うよ。」
「なんで違うんですか?」
ここで、次の授業が始まるチャイムがなったので、二人ともあわてて次の授業に向かいました(笑)。
もう禅問答です。
こんなのもありました。
In first class, every child was saved, as were all but five (of 144) women, three of whom chose to die with their husbands.
Titanicに乗っていた上流階級の男性は、子供や女性を優先して救命ボートにのせ自らは死を選んだ、つまり昔は"nobles obliges"が生きていた、という主旨の文章です。この文は「1等客室の乗客は、子供はすべて救われて、女性も5人を除いては全員救われた」という意味です。asが「~のように」という感じなのは、当然、ハイレベル入試問題をやるような生徒は全員知っています。だから、文章の筋を追っていればこれも簡単にわかる文です。と思いきや、またまた成績優秀な生徒が授業後に質問に。。。
「このasは品詞はなんなんですか?」
「え?文の意味はわかるんでしょ?」
「わかります。でも、このasの後の文構造がよくわからないんです。」
「as = saved, で倒置になってんじゃないの?」
「え!そうなんですか!?だったらasの品詞はなんなんですか?」
「関係形容詞?いや、違うかな、接続詞じゃん。。。知らないよ。もういいじゃん。だって、文の意味は最初に読んだときにわかったんでしょ?」
「それはわかりましたけど、品詞と文構造がわからなきゃダメだって言われたんですよ。」
「誰に!?」
「英語の先生はいつもそう言ってますよ。」
トホホ...
でも、本当に多くの高校生が、文法解説まみれの授業のおかげでこんな思考法になっているのではないかな、と日々感じています。
勉強の「害」の一例でした。みなさんは、こういう悪循環に陥らないよう注意しましょう。